【雑感】

 

イスラエル発、カナダ行きのエア・カナダの旅客機が、貨物室に預けられていた犬を救うために、行き先を変更して、ドイツに緊急着陸したというニュースがあった。

このエア・カナダ86便は、イスラエルのテルアビブから、カナダのトロントに向かう途中、貨物室の暖房装置に問題が発生した。その貨物室には、乗客の愛犬家が預けた7歳の雄のフレンチブルドッグ「シンバ」がいた。

航空会社の広報担当者の話によると、暖房装置の問題を知った機長は、犬の安全を気遣い「極めて劣悪な環境の中で、そのまま飛行を続ければシンバの命が脅かされることになる」と判断したとのことであった。

機長の英断で同機は急きょ行き先を変更し、ドイツのフランクフルトに緊急着陸。シンバは別便に乗り換え、85便は約25分遅れでカナダに向かったという。愛犬家にとっては何とも微笑ましいニュースである。

前出の広報担当者は「機長は乗客には遅れたことを謝罪した上で、犬が危険に晒される恐れがあり、行き先の変更によって安全が確保されたことを伝えました。機内はおおむね好意的な反応だったそうです」という。

飼い主はトロント空港で地元メディアの取材に応えて「このシンバは自分の子供みたいなもの」と語り、臨機応変に対応した機長に感謝の意を表した。また、他の乗客も、問題なく正しい判断だったとコメントしている。

そんな微笑ましい話題とは裏腹に、千葉県松戸市で「人が犬に噛まれた」との110番通報を受けた松戸署の警察官三名が拳銃を13発も発砲し、犬を射殺したとのニュースが流れた。

正直、驚かざるを得なかった。警察によれば、犬を見つけた際、制止を試みたが襲いかかって来たために発砲したとのことであった。その犬は13発目で倒れ、拳銃の使用は妥当で適切であったとの報道であるが、しかし・・・。

飼い主によると、犬はオスの紀州犬で体長約120センチ。体重約21キロとのことである。犬は普段から家族に噛み付くなどしており、物置の中で飼われていたそうだ。事件の前日、首輪とリードで住宅の敷地内に繋がれていたようだが、当日は首輪が残されていたことから抜いて逃げたとみられる。それが、たまたま大きな事件となった。

私がここで言いたいのは、ペットに責任は無いということである。今回事件があったからとはいえ、紀州犬が特に危険な犬種という訳ではない。

これは全ての犬に言えることではあるが、きちんとしつけをして、飼い主との信頼関係が築かれていれば、このような事件は起こらなかったであろう。

今回、射殺された紀州犬はどのような飼われ方をしていたのだろうか? テレビ報道によると、かなり劣悪な状況下で飼われていたようだ。狭いベランダに繋がれて、散歩にも連れていく事もなかったと近所の人は語っている。ベランダには排泄物が放置され、夏になると臭いが酷かったそうだ。

飼い主との信頼関係どころか、多分に人間不信に陥っていたのかもしれない。洋の東西でペットを囲むニュースがこれだけ違うのかと思うと至極残念でならない。

人間(飼い主責任)が起こしたことである事は言うまでもないが、今後二度とこのような事件が起こらない事を祈りたい。
                        
                                  菊地文博筆

 
掲載:「ペッツレビューbyペット経営」10月号 (株)野生社

Yaseisha Co.,Ltd.(株)野生社 田中陽一郎 

4-21-10. Narita-Higashi, Suginami-ku, Tokyo, Japan

166-0015   東京都杉並区成田東4-21-10

Phone +81-3-6383-2158 FAX +81-3-6383-2159

TEL.03-6383-2158 FAX.03-6383-2159

HP http://www.yaseisha.com mail info@yaseisha.com